2025年のトビリシ不動産市場

1.物件の売買価格

2025年のトビリシ不動産市場は、近年と比較して一定の変動が見られた一年であったと考えられます。本稿では、当社が独自に収集したデータに加え、Galt & Taggartおよびジョージア国立銀行の公開情報を参考資料として、市場動向の整理を目的とした分析を行っています。なお、本記事は著者個人の見解に基づくものであり、必ずしも当社の公式見解を示すものではありません。また、本記事は市場理解を目的とした情報提供であり、将来の価格動向や投資成果を保証するものではありません。本稿における分析対象は主として流通市場(中古市場)となります。

2025年は、トビリシ全体において売買物件価格に一定の下落傾向が見られました。昨年2月頃を境として平均価格は徐々に低下し、その動きは年末まで継続した可能性があります。月次データの推移を見る限り、こうした傾向が示唆されているようにも見受けられます。

図1.物件の平均価格(米ドル)。1は2025年1月のことを指す。

なお、この価格変動は、単純に一部の極端な価格帯の物件による統計的な歪みによるものとは考えにくく、中央値ベースでの推移においても類似した動きが見られることから、市場全体における価格調整の可能性が示唆されます。

図2.物件価格中央値(米ドル)。1は2025年1月のことを指す。

また、この傾向は特定の地域に限定されたものではなく、トビリシ全域で観察される可能性があります。高級住宅地として知られるVakeでは、市場全体の動向を反映する形で価格調整が進んでいるようにも見受けられます。

図3.物件の平均価格(米ドル、Vake区)。1は2025年1月のことを指す。

同様に、住宅地として人気の高いSaburtaloにおいても、交通利便性や安定した居住需要があるにもかかわらず、一定の価格調整が見られました。

図4.物件の平均価格(米ドル、Saburtalo区)。1は2025年1月のことを指す。

では、こうした価格動向の背景には何があるのでしょうか。

一つの要因として、供給の増加が影響している可能性が考えられます。近年、Digomi、Gldani、Varketili、ならびにSaburtalo周辺の比較的外縁部など、トビリシ郊外では新築開発が進んでおり、国内居住者向け住宅の供給量が増加している可能性があります。こうした動きは、2025年における購入件数の推移にも一定程度反映されている可能性が示唆されます。

図5.地区によって売られた物件の数。

一方で、需要側では、2022年以降の地政学的要因による移民流入の増加が一巡し、外国人需要が徐々に落ち着きつつある可能性も指摘できます。これにより、特に高価格帯物件の需要構造に変化が生じた可能性があります。

図6. 月次の不動産インデックス(ラリ建て)。100は2010年1月に該当します。

さらに、価格動向の分析においては物件面積の変化も重要な要素となります。2025年に販売された物件の面積中央値を見ると、小型化の傾向が確認されるため、平均価格の低下には価格水準の変化だけでなく、商品構成の変化(ミックス効果)が影響している可能性も考えられます。

図7.売られている物件の面積の中央値(平米)。1は2025年1月のことを指す。

面積縮小の背景としては、地理的制約も一因と考えられます。トビリシは山地に囲まれており、中心部では新規開発用地が限られているため、新築物件は縦方向の開発が進む傾向があります。また、住宅設計の変化として、独立型キッチンからリビング一体型への移行やスタジオタイプの増加なども、専有面積のコンパクト化に影響している可能性があります。

加えて、都市計画や建設規制の影響についても考慮する必要がありますが、その影響度については慎重な検証が必要です。

2.賃貸価格の動向

賃貸市場についても、売買市場と同様に一定の変動が見られました。ただし、売買価格が比較的緩やかに調整されたのに対し、賃料はより急速な変化を示した可能性があります。データ上では、2025年10月頃から賃料が下落傾向に入ったように見受けられます。

図8.物件の賃貸価格の中央値(米ドル)。1は2025年1月のことを指す。

この背景として、小型物件の供給増加が関係している可能性があります。賃料と物件面積の推移を比較すると一定の相関が確認され、ピアソン相関係数は0.844となっています(相関係数は−1から1の範囲で示され、1に近いほど強い正の相関を意味します)。ただし、相関関係は必ずしも因果関係を意味するものではない点には留意が必要です。

図9.賃貸に出された物件の面積の中央値(平米)。1は2025年1月のことを指す。

3.今後の見通し

今後については、短期的には市場調整が継続する可能性があります。外国人居住者数の変動や、市場環境が2022年以前の状態へ回帰しつつある点が背景として考えられます。

一方で、物件面積の縮小は比較的短期間で進行しているため、中期的な影響については引き続き観察が必要です。長期的には住宅のコンパクト化が進む可能性も考えられますが、確定的な判断は時期尚早といえるでしょう。

外部的な地政学的要因や人口動態の急変など新たな変数が生じない限り、現在の市場調整が一定期間続く可能性があると考えられます。

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